三大栄養素「油(脂質)」とは?~油のマメ知識

◆そもそも油とは何なのか?◆

油(脂肪)は炭水化物・たんぱく質と共に、 三大栄養素として人が生命を維持していく上で欠くことができない栄養素です。
油は、植物油も動物脂も1個のグリセリンに3個の脂肪酸が結合しています。

◆脂肪酸とは何か? 脂肪酸の種類とその特徴◆

脂肪酸は、大きく分けると飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けることができます。
以下にその種類と特徴をまとめてみます。


 飽和脂肪酸
一般に固形で乳製品や肉などの動物性脂肪に多く含まれ、凝固温度が高いのが特徴です。
牛や豚などの哺乳類動物は体温が人間より高く、動物の体内では脂肪は液状を保ちますが、
人間の体内にはいると凝固しやすくなります。
主にエネルギー源の役目を果たします。
パルミチン酸、ステアリン酸など
不飽和脂肪酸
常温では液状で、 植物油に多く含まれています。
身体の各種細胞膜の大切な構成成分です。
オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などがあります。
人間の体内でつくることが出来ないので、 食物からとらなければならない
リノール酸やリノレン酸は、 必須脂肪酸と呼ばれています。
上記のように油にも様々な種類がある事がわかります。
では、 体に必要な油、 不必要な油はどのようなもので、どこが違うのでしょうか?
油が持つ性質について次頁でもう少し詳しくまとめてみましょう。

◆身体に良い油、悪い油について◆

油(脂質)には植物性、 動物性のものが存在しますが、 その中でもさらに細かく種類が分かれています。
現代の食生活を支える多種多様な油のうち、私たち消費者はどのような油を選べば良いのでしょうか?
以下の表を基に考えてみましょう。

◆油の成分の種類とその特徴について◆

リノール酸
オメガ6系脂肪酸の代表的な多価不飽和脂肪酸です。
体内で合成することができない為、食品から
摂る必要があります。
(必須脂肪酸)リノール酸が
不足すると、エネルギー生産能力の低下、皮膚や臓器の健康に支障をきたすとされています。
リノール酸の摂取量の目安は 1 日 1 ~ 2g(ご飯 2杯半程度)ですが、
近年の平均で必要量の 10 倍以
上も摂取しており過剰摂取による健康被害の方が問題視されています。
また、リノール酸は酸化し
やすく、体内で過酸化脂質の有害物質をつくる為、ガンを促進する要因の一つとして挙げられます。
他にもアレルギー症状を強める作用があり、アトピー性皮膚炎、花粉症等の慢性疾患の症状を悪化させたり、 血小板を凝縮させて血栓をつくり血管
を詰まらせる原因にもなります。
また過剰摂取に
より善玉といわれる HDL コレステロールを減らしてしまうことが研究でわかっています。

オレイン酸
オメガ 9 系脂肪酸の代表的な一価不飽和脂肪酸です。
オリーブ油の70%を占める成分で、HDL( 善玉 ) コレステロールは下げずに、動脈硬化予防の最大の条件である LDL( 悪玉 ) コレステロールだけを減らします。
オレイン酸は酸化しにくく、発がんのリスクを高める過酸化脂質の発生を下げます。
オリーブ油の中でも「バージンオイル」は冷圧法による一番絞りで非加熱なのでオレイン酸の含有量が多いのが特徴です。
オリーブ油も摂りすぎるとエネルギーオーバーで肥満の原因になります。オレイン酸はなたね油等にも多く含まれています。
植物油の中で唯一、オリーブオイルは果実から搾られ、そのまま食用にすることができるオイルです。
主にエネルギー源として利用されたり、細胞の生成に関係しています。

◆油の成分の種類とその特徴について◆


α- リノレン酸

オメガ 3 系脂肪酸の多価不飽和脂肪酸です。
オメガ6系のリノール酸、オメガ3系のα- リノレン酸は人の体内で合成することのできない栄養素で必須脂肪酸と呼ばれています。
二つの必須脂肪酸は互いに協調して働くため、バランスよく摂取する必要があります。
現代の食環境はリノール酸は過剰摂取なのに比べオメガ3系のαリノレン酸が不足している状態と言えます。
α- リノレン酸は熱、光、酸素に弱く、加工や保存性が悪いのが特徴です。
α- リノレン酸は細胞膜の重要な構成要素で、欠乏すると丈夫な細胞膜が作られなくなり多くの問題が生じます。
また、脳、神経系の細胞の生成、発達、働きに重要な役割を果たしています。
近年の研究でα- リノレン酸が欠乏すると DHA が合成できず、アルツハイマーや痴呆にも関与していると考えられています。
他にも血中のコレステロールをコントロールしたり血液をさらさらにし、心臓病や脳血管病を防ぐ働きがあり、必然的に血圧が下がるといわれています。
α- リノレン酸を多く含む海藻を食べる天然魚には DHA EPA が多く含まれます。
さば、さんま、真いわし、あじ、ぶり、まぐろ、すじこ、うなぎ、真鯛などです。
植物油では、えごま油(しそ油)、亜麻仁油にはα- リノレン酸が多く含まれているので積極的に摂取しましょう
トランス脂肪酸
健康より経済が優先された結果、自然界には存在しない油、トランス脂肪酸を含む食用油が多くなってしまいました。
大手メーカーの食用油は、昔ながらの圧搾法ではなく、多量の化学物質や水素を用いて抽出され、高温にさらされる事で有害物質が生じます。
不飽和脂肪酸は不安定な脂肪酸であり、老化、酸化しやすく日持ちが悪いため
その多くは水素を化学的な技術で無理矢理にくっつけて(水素添加)造られています。

欧米では食用油のトランス脂肪酸含有量の上限値は0.1%、それを超えるものは販売禁止です。
トランス脂肪酸の含有量の表示義務も定めています。

しかし残念ながら日本ではまだこのような基準が定められていません。
これが市販されている安い油はお勧めできない理由です。

外食産業で使用される油の多くがトランス脂肪2.4%程度の食用油です。
ファーストフードだけでなくマヨネーズ、マーガリン、加工食品 ( フライドポテト、ポテトチップス、スナック菓子 ) も注意が必要です。

私たちは自分の健康は自分で守っていくしかないのです。
脂肪酸は細胞膜の構成要素ですが、細胞膜の中にトランス脂肪酸が紛れこむと細胞膜は弱くなり、
細胞膜や細胞の働きを狂わせ、様々な健康被害を引き起こす原因になります。

◆油とビタミンの意外な関係性◆

意外と知られていませんが、植物油にはビタミンを供給したり、吸収率をアップさせる働きがあります。
主にビタミンのセミナーで述べましたが、ビタミンといってもビタミンA、B1、B2、C、D、E、Kなど様々なビタミンがあります。
それぞれ体内で必要な働きがあり、私たちは野菜などの食品から摂取していますが、ビタミンには水に溶けるもの(水溶性)と油に溶けるもの

(脂溶性)のものがあります。例えばビタミンと植物油の関係する例として以下のようなものがあります。

●ビタミン A の吸収率がアップ●

緑黄色野菜に多く含まれるβ- カロチン ( ビタミンA) は、脂溶性ビタミンで、油と一緒に食べることで吸収率が大幅にアップします。

●ビタミン C を壊さない●

植物油は、パセリ、ピーマン、ほうれん草など、ビタミンCを多く含む野菜の調理にはもってこいです。
短時間で加熱調理できるので、ビタミンCの破壊が少なくてすみます。また、植物油が表面をおおって、熱や空気からもビタミンCを守ります。

● ビタミン B1 を節約します●

でんぷん質の食べものの消化には、大量のビタミンB1 が必要です。不足すると脚気や食欲不振、疲労しやすいなどの症状が現れます。植物油には、
このビタミンB1 の消費を節約する働きがありますから、油料理は、ビタミンB1 の確保にも効果的な調理です。

●老化を抑えるビタミン E がたっぷり●

植物油は、ビタミンEの重要な供給源。私たち日本人は、ビタミンEを約 25%も植物油からとっているといわれています。
このビタミンEは、血液の流れをよくしたり、不妊症を予防するほか、老化の元凶といわれる活性酸素の働きを抑え、
「過酸化脂質」の生成を抑える働きがあります。
「過酸化脂質」は、脳や心臓、肝臓、皮膚などの細胞に付着して老化現象をひきおこす物質ですが、
ビタミンEは、この物質が体内で作られるのを抑え、老化防止に一役買っています

●発ガン防止効果もあるビタミン E●

ビタミンEは、ガンの予防にも効果があるといわれています。
国立がんセンターが発表した「がんを防ぐための 12 ヶ条」にも、ビタミンEには発ガンを防ぐ働きがあることが明記されており、適量の摂取をすすめています。
こうしてみるとビタミンEをたっぷり含んだ植物油は、まさに健康維持に欠かせない食品といえるでしょう。

◆油は生命維持に必要不可欠。理想的なバランスで摂取を◆

1995 年、厚生労働省が策定する「日本人の栄養所要量(第 5次改定)」に初めてオメガ 3(α- リノレン酸)脂肪酸の摂取が推奨されたように、
近年になってようやく健康に「油」はとても重要な関係があるとの認識が広がりつつあります。
現在の「日本人の食事摂取基準(2010 年版)では、オメガ 3(α- リノレン酸)脂肪酸を一日あたり 1.8~2.4g 以上(成人)摂取するように目標値が新たに設定されました。
市場には本当にたくさんの種類の油が出回っています。この機会に私たち消費者ひとりひとりが、「良い油とは?」を考え、正しく理解し、本当に良いものを「見極める」という意識をもちましょう

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