◆糖質(炭水化物) の栄養と働き◆
糖質は脳や筋肉などの体の主要なエネルギー源として使われ、 残った糖質は体内の血糖値が低下した時に使えるよう脂質として蓄積されます。
糖質は主に小腸で消化・吸収されて血液と一緒に全身をめぐり体の中で1gあたり4kcal のエネルギーになります。
特に脳では血液中の糖質だけがエネルギー源なので、極端に糖質が不足すると意識障害などがおこることがあります。
また糖質は、 同じエネルギー源でも脂質やたんぱく質と比べると、 すばやく使えるという特長があります。
このため、ウォーキングなど長時間の軽い運動には主に脂質が使われますが、 短距離走のように短時間の激しい運動には糖質からのエネルギーが使われます。
糖質の体内での存在量は意外に少なく、血液中のブドウ糖のほか、 肝臓や筋肉にグリコーゲンとして少量を貯蔵しているだけです。
すぐ使う量以上に食べた糖質は、体の中で脂肪となって蓄積されるからです。
≪1日の摂取量の目安≫
糖質が多く含まれている食べ物は、 ご飯、パン、 めん、 いも、 果物、砂糖、はちみつなどです。
1日2,000kcal 必要な人では、およそ60%程度の 1,200kcal を糖質からとるのが望ましいといわれてます。
これはご飯にすると、 茶わんにおよそ5杯分です。
糖質はとり過ぎると、肥満や生活習慣病をまねくおそれがあります。
一方、不足が続くと、 体力の低下や疲れやすくなるなど快適な生活の妨げになります。
適切な摂取をこころがけましょう。
◆炭水化物と糖質と糖類の違い◆
炭水化物には、 消化・吸収されずに腸まで届く 「食物繊維」も含まれます。
炭水化物のうち、「食物繊維」を除いたものが 「糖質」です。
糖質と食物繊維では、 からだの中での作用も大きく異なりますから区別して考える必要があります。
「糖類」とは、単糖類と二糖類の総称のことを指します。
単糖類は果物に多く含まれる果糖や、 ブドウ糖などを指し、二糖類には砂糖や、牛乳に含まれる乳糖などがあります。
多糖類は複数の単糖類が繋がったもので、 でんぷんやオリゴ糖などがあります。
多糖類は体内で分解されてから吸収されるため、糖類よりは吸収がゆっくりになります。
◆糖質に含まれるブドウ糖と肝臓の動き◆
生きていくうえで絶え間なく必要なエネルギーを補給するために、 肝臓は毎分1.8~2.2mg/kg (体重) のブドウ糖を血中に放出し続けています。
激しい運動や脳を使う事でプラスアルファのエネルギーが必要になりますが、血中に十分なブドウ糖がない場合、
肝臓は、蓄えていたグリコーゲンをブドウ糖に戻すほか、アミノ酸や脂質に含まれる
グリセロールを原料にブドウ糖を作り出
して活動をコントロールしています。
このように「ブドウ糖」は大切なエネルギー源ですが、 ではそのブドウ糖が足りなくなってしまっ
た場合はどうするのでしょうか? その時に登場するのが 「ケトン体」 です。 肝臓は中性脂肪が分
解されてできた脂肪酸から 「ケトン体」 という物質を作り出します。 筋肉も脳も、 エネルギー源
としてケトン体を利用することができます。 逆に、 ブドウ糖がなくてもケトン体があればそれで
いいかというとそうではありません。
ケトン体は酸性物質なので、 増えすぎると血液が酸性に傾く 「ケトアシドーシス」 を起こします。
重症の場合、 全身のさまざまな機能が低下します。 やはり基本のエネルギー源はブドウ糖で、 ケ
トン体はピンチヒッターといったところでしょうか。
◆腸内環境にも大切な働きをする糖質◆
人間のからだは、 約60兆の細胞で構成されます。
一方、人間の腸内にいる腸内細菌の総数は、 その10倍の600 兆を超え、 総重量は 1kgにも及ぶと言われています。
この 「共存者」たちは宿主である私たちと影響し合って生きています。
例えば 2011年には高カロリーな食事を3日間続けただけで、
エネルギーの吸収効率を上げて肥満を助長するように働く「肥満菌」が増えてしまうことが確認されました。
もちろん便秘や下痢、腸の感染症にかかりやすいかどうかといったことには、腸内細菌のコンディションによるところが大きいと言えます。
腸内細菌は、人間が消化・吸収した残りものを餌にしています。
でんぷんの中でもなかなか消化されない 「難消化性でんぷん」 や 「食物繊維」 は腸内細菌のごちそうです。
難消化性でんぷんはご飯やパン、スパゲッティなどの穀類、 じゃがいも、豆類などに含まれています。
これらを食べた腸内細菌は、「短鎖脂肪酸」という成分を生み出します。
「短鎖脂肪酸」は、腸の細胞のエネルギー源となり細胞の生まれ変わりを促すことで、 キレイで丈夫な腸を作ってくれます。
また腸内を酸性に傾けて、 あまり増えてほしくないタイプの腸内細菌が住みにくい環境にしてくれます。